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韓国・韓国語やK-POPについてのピビンパプ(まぜごはん)的エッセイ集
by sungsa
希望の歌唱

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チャン・サイク장사익という名の歌手をご存知だろうか。


実は昨晩、彼のコンサートに行ってきた。
会場は神戸ハーバーランドにあるMホール。
用事があって行けないからと、数日前に
ハングル講座の恩師からチケットを頂いていたのだ。
朝鮮通信使400周年記念行事の一環での無料コンサートだった。

寡聞にして彼の名を知らなかった。
私の手元には頂いたチケットと、
白い民族衣装をまとい笑みを浮かべ両手を揚げて唄う
彼の写真を載せたチラシが一枚。

韓国の歌手という以外、何の予備知識も無い、
素の状態で臨んだコンサートだった。


それにしても大所帯だ。
中国の二胡にも似た韓国伝統の弦楽器へグム、
チャンゴ等の伝統打楽器、
そしてギター、ベース、ピアノ、
ドラムス、トランペット、ハープの西洋楽器、
更に6人のコーラス陣。

歌中劇、唱歌、民謡、演歌、ジャズ、ブルース、…
いろんな音楽ジャンルを連想させるが
そのどれにも当てはまらず
これはただ、チャン・サイクの音楽。
月並みだけども、そう呼ぶ他ない。
只、洋楽の要素はふんだんにあるけども
伝統の打楽をどっしりと演奏の中心に据えてある。
根底にあって、彼の自在な歌唱を支えているのは
韓国古来のリズムだ。

変拍子も混じる動的なリズム。
血湧き肉踊る、高揚感。


チャン・サイクの圧倒的な声が、
彼ら楽隊をバックに、
振り絞るように唱う。詠う。。
その声の表情の豊かさ。
そして韓国語の響きの暖かさ。
歌詞の中に“ひまん”という言葉が聴き取れた。
희망=希望。

すすり泣き、嘆き、あがき、…
終いには言葉にならない肉声をぶつけてくる。
だけどその声には絶望の暗い響きは決してなくて
温もりを感じている自分を見つけるのだ。

だから、これは哀感に満ちているけれども、希望の歌唱だ。
希望を内に孕(はら)んでいる哀しい唄なんだ。

奔流のような彼の音楽の中を漂いながら
僕はそんな風に感じていた。

希望の歌唱_d0021973_024368.jpg

〈続く〉
by sungsa | 2007-11-30 23:59 | 韓国歌謡の詩を味わう
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