韓国・韓国語やK-POPについてのピビンパプ(まぜごはん)的エッセイ集
by sungsa
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エレジーの女王 『李美子history』

今年のはじめ、1月頃の事。
ヒョンが韓国から大阪・京都観光に来る前に電話をくれて、
おみやげに何か欲しいものはないか、と私に聞くので
しばらく考えた末、李美子(い・みじゃ)さんのCDをお願いした。

大阪ミナミの宿を訪ねてひとしきり再会を喜び合った後で
ヒョンは約束どおりに、この3枚組(!)のベスト盤
『李美子history』を手渡してくれた。
聞けば家の近くのCD屋さんでは李美子は置いてなくて
釜山の街を探した回ったあげく、
南浦洞でやっと見つけたものだそうだ。
のむこまうぉっそよ…。(ありがた過ぎました。)


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李美子이 미자は韓国トロット歌謡の大歌手である。
日本の美空ひばりみたいな存在なんだと、ヒョンは言っていた。
(ちなみに彼は美空ひばりファンである。京都の嵐山にある
美空ひばり記念館を廻れる観光バスツアーをヒョンの為に予約した。
残念ながら都合が付かず京都へは同行できなかったけど。)

そもそも、私が李美子の歌声を聴くことになったのは
3年ほど前、大阪の駅前第3ビルの地下にある中古レコード街の
とあるお店の閉店処分100円セールで、
この一枚を発見したのがきっかけだった。
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『“エレジーの女王”李美子ゴールドヒットアルバム第1集』…。
この貴重な音盤が、韓国歌謡のLP盤を10枚ほど
まとめて買った中に紛れて入っていたわけである。

ちなみにソウルだと新世界百貨店横の階段を降りた
明洞の地下街に中古レコード屋さんが何軒かある。
どれでもLP盤一枚5000Wくらいと安いので
今度じっくりレコード漁りをしてみたいものだ。


トロット、簡単にいえば韓国の演歌である。
演歌というと実はわたしの最も苦手なジャンルなんである。
ところがどっこい、
家に帰ってレコードに針を落とした瞬間から
懐かし歌謡の簡素なアレンジの演奏にのせて唄う
李美子さんの唄声に魅了されてしまったのである。

声にダイアナ・ロスみたいな艶がある。
でももっとキメの細やかな感じで品がある。
しかも抜群に唄が上手だ。
その声に、ジャンルなんて超えて聞き惚れてしまったのだ。


CD3枚組全62曲(!)収録の『李美子history』。
彼女とコンビを組む作曲家の朴椿石先生
박춘석 선생님(パク・チュンソク先生)が直々に
企画・編集を担当したオリジナル・コレクションであると
ジャケット裏にはクレジットされている。
つまりは“李美子決定盤”ということだろう。

全集の1枚目、オープニングの
『열아홉 순정(十九の純情)』にはびっくり。
この心躍るスイング感。そして瑞々しい躍動感。
見事な歌唱。楽曲そのものやアレンジもいい。
ストリングスやホーンの華麗な響き(ホーンはジャズの色が濃いが)。
なにより当時としてはリズムセンスが画期的じゃないだろうか。
今聴いても全く古臭さを感じない。
創世期のモータウンヒットにも繋がるような感覚というか。
シュプリームスの曲だと言われてもさして違和感がないような。

いや調べてみるとこれは1959年のデビュー曲だから
シュプリームスが世に知られるよりも遥かに早く、
モータウンの誕生と全く同時期なんである。
おそらく朴椿石先生は当時、最新の美国音楽事情を
よくご存知だったのではないだろうか。
日本のように美軍放送を聴けたのだろうし。
それにしてもこんな曲を19歳にして
見事に唄いこなしてしまう李美子の才能、恐るべし。
若々しさに加え、微妙な乙女心を巧みに唄い分けるうまさ。


他にも洋楽志向の唄が聴けるのかと、期待がすごく高まったが、
残念。それはこの『열아홉 순정(十九の純情)』1曲だけだった。
2曲目に収録されているヒット曲『동백아가씨(椿娘)』
以降は基本的に全てトロット歌謡である。
収録曲のデータが無いため録音年月日がわからないが
ひょっとしたら『열아홉 순정(十九の純情)』が不発で
路線変更を余儀なくされたのだろうか。
そのへんの事情はよくわからない。
ただこれほどの力量の持ち主、ジャズやポップスを唄っても
きっと素晴らしかったに違いないと思う。

曲によってはちらほらと洋楽の影響が見えるのが楽しい。
『눈물이 진주라면(涙が真珠なら)』
サイドギターが刻むリズム、間奏のエレピの音がかっこいい。
『당신은 모르리(貴方はご存知ないでしょう)』ともども
今に続くリズム歌謡というか、
踊れるトロットのスタイルの萌芽が感じられる。
『노래는 나의 인생(歌はわたしの人生)』は感動的なバラード。


今気がついたが、声質や唄のうまさに加えて
彼女の歌声の持つ微妙なスイングする感じ。
“ゆらぎ”とでもいうか、これが大変心地よいのである。


韓国が生んだ不世出の女性シンガー、李美子이 미자(い・みじゃ)。
デビュー40周年を超えた今も、日本へと公演に訪れたり、
元気に活動しておられるようである。
R&Bなど洋楽系の音楽に慣れ親しんだ
現代の韓国の若者たちの耳には、
はたして彼女の歌声はどう響くのであろうか。
トロットの枠を超えて広く聴かれるべき歌手だと思うのだが。


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注:各曲の日本題は公式的なものではなく
便宜上私sungsaが勝手に翻訳して付けたものです。
ご了承ください。
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by sungsa | 2006-09-30 19:22 | 韓国歌謡の詩を味わう
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